Bal Musette

バル・ミュゼットについて

「パリ・ミュゼット」は、20世紀初頭のパリで大流行した、アコーディオン中心のアンサンブルによって演奏される大衆音楽です。

当時のパリ庶民は、軽快でありながら哀愁を帯びたこの音楽が流れるガンゲットやバル(ダンス酒場)で、踊り、語らい、そして酒を酌み交わしました。これらの酒場は「バル・ミュゼット」と呼ばれ、週末には何処も超満員だったそうです。

 

パリ・ミュゼットの音楽的ルーツは、フランス中部の山岳地帯、オーベルニュ地方に伝わるキャブレット(フイゴ式バグパイプ)によって演奏される民謡(ミュゼット)で、その歴史は11世紀ごろの吟遊詩人まで遡るといわれています。オーベルニュ地方では、今でもこの伝統音楽が継承されています。

 

一方、1800年代にオーストリアで開発されたといわれるアコーディオンは、イタリアで大人気となります。その後アコーディオンを持ってパリにやってきたイタリア人が、キャブレットによるフランスの民謡に出会います。この出会いによって戦前のパリで生まれたのが、フランスのダンス民謡のテイストにイタリアンな節回しが加味された、独特の「パリ・ミュゼット」と呼ばれる音楽なのです。

 

その後もパリ・ミュゼットは、フランス周辺諸国の民謡やジプシーの旋律など様々な音楽の影響を受けて色彩豊かに変化し続けました。

バル・ミュゼットのブームで一躍脚光を浴びた楽器、アコーディオン。その愛好家は急増し、伝統的なミュゼットを演奏していたキャブレットの方は、次第にパリから姿を消してゆきました。やがてアコーディオンを中心に、バンジョー、ピアノ、そしてサックスなどの管楽器、ジプシーギターやバイオリンなどの編成からなるバル・ミュゼット楽団のスタイルが定着してゆきました。